三田春日神社 / 東京都港区

港区

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概要

三田鎮守・学問平和の守護神の春日さま

東京港区三田に鎮座する神社。
旧社格は村社で、三田の鎮守。
江戸時代は江戸府内唯一の春日社として、徳川将軍家や諸大名から崇敬を集めた。
現在は慶應義塾大学三田キャンパスの隣に鎮座。
地域の方からは「春日さま」と称され「学問平和の守護神」として親しまれている。
また桜の時期は桜の石段となり密かな桜の名所となる。

神社情報

三田春日神社(みたかすがじんじゃ)

御祭神:天児屋根命
社格等:村社
例大祭:9月9日に近い土・日曜
所在地:東京都港区三田2-13-9
最寄駅:田町駅・三田駅・赤羽橋駅
公式サイト:http://phoresto.net/shrine/mitakasuga/

御由緒

 天徳二年(958年)武蔵国国司藤原正房卿任国の折、藤原氏ならびに皇室外戚の氏神なる大和国春日社第三殿に祀る天児屋根命の御神霊を勧請鎮座。
 当時、武蔵国荏原三田邑にあって土地の人びとより大いに崇敬され、その後建仁三年(1203年)仏教の隆盛に伴い、当社にも十一面観音(弘法大師作)の尊像を安置、神仏相まって繁栄し神徳四辺に輝き渡ったと伝える。天文年間(1533-55年)荏原目黒三田より、港区三田高台の今の地に遷座する。上野の寛永寺が建立されてより、東叡山末妙禅院が別当となり、三笠山神宮司と称し僧侶がこれを司ることになった。代々天台宗を継承し、神仏ともにますます繁栄し、ことに江戸府内唯一の春日社として、代々徳川将軍の尊崇厚く、江戸城登城の諸大名も崇敬深く、九月九日の例祭は重陽の節句として、たいせつな儀式として春日社も大いに賑わい、大名等も白木の三宝に熨斗と菊花一枝を添えて奉献、終えて直会に菊酒を汲む神事が執行され、老若男女の参拝の多く、江戸名物の一つとして、徳川末期まで盛んであったという。当代、戦前の建物はすべて欅造りで、彫刻のみごとなことはその道の範といわれていたが、惜しくも戦禍により焼失。昭和三十四年九月、本殿・幣殿・拝殿を建築、末社稲荷社・鳥居・社務所増築を完了して戦後復興事業を成し終える。平成五年三田通り拡幅にともない社務所を新築、平成七年境内整備を終え平成十四年十一月狛犬を建立、現在に至る。公式サイトより)

歴史考察

平安時代に荏原三田邑(目黒区三田)に創建

社伝によると、天徳二年(958)に創建と伝わる。
武蔵国司・藤原正房が、藤原氏ならびに皇室外戚の氏神である「春日大社」第三殿に祀られている天児屋根命の御分霊を勧請したと云う。

春日大社(かすがたいしゃ)
奈良県奈良市に鎮座する神社で、全国に約1,000社ある春日神社の総本社。
延喜式内社(名神大社)、二十二社(上七社)の一社、旧社格は官幣大社。
中臣氏(後の藤原氏)の氏神を祀るために平城京に創建。
春日神は武甕槌命・経津主命・天児屋根命・比売神の4柱で春日神と総称される。
現在は世界遺産「古都奈良の文化財」の1つとして登録されている。
春日大社
春日大社は、春日山原始林を背景に奈良公園内にある神社。世界遺産「古都奈良の文化財」であり、 奈良 時代に平城京の守護と国民の繁栄を祈願する為に創建され藤原氏の氏神を祀る。神が鹿に乗って来たと言い伝わる

創建当時は荏原三田邑(えばらみたむら)と呼ばれた場所に創建。
これは現在の目黒区三田にあたる場所。

創建時の旧鎮座地にも神社が残る
現在の鎮座地は港区三田であるが、創建時は現在の目黒区三田にあたる。
旧鎮座地(日の丸自動車学校近く)には現在も「目黒三田春日神社」(現・当社の兼務社)が鎮座。

建仁三年(1203)、仏教隆盛に伴ない本地仏として弘法大師(空海)作と伝わる十一両観音の尊像を安置。

本地仏(ほんじぶつ)
日本の八百万の神々は、様々な仏が化身として日本の地に現れた権現であるという「本地垂迹(ほんじすいじゃく)」の考えの中で、神の正体とされる仏を本地仏と呼んだ。

現在地(港区三田)に遷座・江戸府内唯一の春日社

天文年間(1533-1555)、創建の地から現在地に遷座。
当社は三田村の鎮守として崇敬を集めた。

三田村の鎮守
現在の行政区画では、目黒区三田から港区三田に遷座した形だが、当時はいずれも三田村の村内であり、三田村の鎮守として同じ村内で遷座したと云う形になっている。
目黒三田は三田村の飛地で、創建の地である旧鎮座地にも「目黒春日神社」が残されている事からも、地域からの崇敬が大変篤かった事が窺える。

寛永二年(1625)、「寛永寺」(台東区上野桜木)の末寺「妙禅院」(現・廃寺)が当社の別当寺となり、「三笠山神宮寺」と称し僧侶が当社の祭祀を司ることになった。

神仏習合の中で崇敬を集めた事が窺える。
東叡山 寛永寺 公式ホームページ
寛永寺(かんえいじ)は、東京都台東区にある天台宗別格大本山の寺院。山号は東叡山(とうえいざん)。

寛文二年(1662)、三田村に商家が立ち並ぶようになり一帯が町奉行支配となる。
当社は三田一帯の鎮守として崇敬を集めた。

江戸府内唯一の春日社
江戸時代には、江戸府内唯一の春日社とされた。
代々徳川将軍家の崇敬も篤かったと云う。
江戸城登城の諸大名からも崇敬篤く、特に9月9日の例祭は江戸名物として盛んであった。

江戸切絵図から見る当社と三田

当社の鎮座地は江戸の切絵図からも見て取れる。

(芝高輪辺絵図)

こちらは江戸後期の芝・高輪周辺の切絵図。
右が北の切絵図となっており当社は図の右側に描かれている。

(芝高輪辺絵図)

北を上に(反時計回りに90℃回転)して当社周辺を拡大したものが上図。

赤円で囲った「春日社」と記されているのが当社。
当社の周辺に三田の地名を見る事ができる。
周辺には数多くの大名屋敷や御家人の屋敷が並んでいるように、当社は諸大名からも崇敬篤かった。

江戸名所図会に描かれた当社

天保年間(1834年/1836年)に発行された『江戸名所図会』に当時の様子が描かれている。

(江戸名所図会)

「三田春日明神社」として描かれているのが当社。
石段の上に鎮座している様子から、地形的には現在もその面影が僅かに残っている。
当時は男坂、女坂があったようで、その間には地蔵。
境内には神楽殿の姿も見え、当時の社殿は総欅造りで彫刻も見事であったと伝えられている。

当時の社殿は東京大空襲で焼失。

明治の神仏分離・戦後の再建

明治になり神仏分離。

神仏習合の色が強かった当社だが神仏分離を余儀なくされる。

明治四年(1871)、三田2丁目に慶應義塾が移転。
以後、当社に隣接する形が続く事となる。

慶應義塾
慶應義塾公式サイトです。慶應義塾について、入学案内、教育、研究、学生生活、大学学部、大学院研究科、一貫教育校、各キャンパス、研究所等の各種情報がご覧いただけます。

明治五年(1872)、村社に列した。

明治四十二年(1909)測図の古地図を見ると当時の様子が伝わる。

今昔マップ on the webより)

当社の鎮座地は赤円で囲った場所で、今も昔も変わらない。
既に当社に隣接する形で慶應義塾があり、当社は慶應義塾を含む三田の鎮守として崇敬を集めた。

昭和二十年(1945)、東京大空襲によって当社も多大な被害を被る。
『江戸名所図会』にも描かれている総欅造りで彫刻も見事であった社殿も焼失した。

昭和三十四年(1959)、社殿が再建。
これが改修されつつ現存。

平成六年(1994)、「赤羽稲荷神社」を境内社として遷座再興。

その後も境内整備が進み現在に至る。

境内案内

慶應義塾大学三田キャンパスの隣に鎮座

慶應義塾大学三田キャンパスの東門隣に鎮座する当社。
明治四年(1871)に慶應義塾が三田に移転して以来、当社に隣接する形が続いている。

三田キャンパス:[慶應義塾]
慶應義塾公式サイト。三田キャンパスの詳細やスポット情報をご覧いただけます。慶應義塾の代名詞にもなっている三田キャンパスには、創立以来の歴史と伝統が刻まれています。

桜田通り沿いに鳥居と社号碑。
鳥居は昭和四十三年(1968)に建立されたもの。

鳥居を潜ると一対の狛犬。
平成十四年(2002)に奉納された狛犬。
着色がされた岡崎現代型。

急な石段・桜の季節には桜の参道に

鳥居の先に石段。
上るのが困難な人のために石段下にも賽銭箱があり下から参拝する事も可能。
やや急勾配な石段があり、これは『江戸名所図会』に描かれた当社と同様で高台に鎮座している。
石段は桜の木で覆われているため、桜の季節になると桜のアーケードを上る形となり美しい。
桜と当社参道。
桜と社殿。

御朱印も桜開花時期は桜の限定御朱印となる。

石段を上ってすぐ左手に手水舎。
身を清める事ができる。

朱色が鮮やかな鉄筋コンクリート造社殿

石段を上がってすぐ正面に社殿。
旧社殿は総欅造りで彫刻も見事であったと云うが戦災によって焼失。
昭和三十四年(1959)に再建され、その後改修されつつ現存。
鉄筋コンクリート造で鮮やかな朱色に塗られているのが特徴。
八つ藤の社紋と、寺社建築によく見られハートマークとして一部で人気の猪目。

猪目(いのめ)
猪の目に由来して、魔除けの意味合いがある模様。
寺社建築にはかなりの頻度で使用されている事が多く、近年ではその形がハートマークに見える事から人気。
各所に猪目が施されている事が多いが、社殿では特に破風板に吊り下げてある懸魚(げぎょ)と呼ばれる部分に見られる事が多い。(上写真の猪目がある場所を懸魚と云う)

福徳稲荷・赤羽稲荷・春日信仰と藤

社殿の左手には境内社が2社。
手水舎の裏手にあるのが赤羽稲荷社。
かつて芝公園丸山に鎮座し、赤羽橋近くの御府内八十八ヶ所の旧27番札所「円明院」に勧請されたものの、明治になり廃寺となり赤羽稲荷だけが残されたが、戦災によって焼失。
古くから商売繁盛・所願成就の御神徳で信仰を集めていたため、平成六年(1994)に当社の境内社として遷座再興が成された。

社殿の左手に福徳稲荷社。
縁起のよい名のお稲荷様。

境内の左側の一画は藤棚とベンチが設置。
休憩所になっていて、慶大生や近隣オフィスのビジネスマンの憩いの場。
隣接してそびえ立つのが慶應義塾大学三田キャンパスの東館。

春日信仰と藤
当社にも藤棚が設けられていて社紋も八つ藤のように、春日信仰と藤は重要な組み合わせ。
春日信仰の総本社である「春日大社」も社紋は下り藤。
「春日大社」は中臣氏(後の藤原氏)の氏神を祀るために平城京に創建した歴史を持ち、藤原氏ゆかりの花が藤とされて大切にされてきた事から、春日信仰と藤はとても密接な関係にある。
春日大社
春日大社は、春日山原始林を背景に奈良公園内にある神社。世界遺産「古都奈良の文化財」であり、 奈良 時代に平城京の守護と国民の繁栄を祈願する為に創建され藤原氏の氏神を祀る。神が鹿に乗って来たと言い伝わる

御朱印には鹿と藤・桜の季節は限定御朱印も

御朱印は社務所にて。
丁寧に対応して下さる。

御朱印は「春日大社」の朱印と、右上に八つ藤の社紋。
左が2015年に頂いたもので、右が2019年に頂いたもので現在はこちらが通常の御朱印。
2022年1月に頂いた通常御朱印。

春日信仰と鹿
春日信仰の神使は鹿とされる。
春日信仰の総本社「春日大社」では、御祭神の武甕槌命(たけみかづちのみこと)が「鹿島神宮」から遷る際に白鹿に乗ってきたとされ、神鹿(しんろく)と尊ばれた。
有名な奈良の鹿も「春日大社」で大切にされた事が起源。

桜の季節には桜の開花時期限定御朱印も授与。
参道の美しい桜を表現した御朱印。
こちらは2023年に頂いた桜仕様の御朱印。
2024年4月に頂いた桜御朱印。

御朱印帳・道中安全祈祷御守と御朱印付き

オリジナルの御朱印帳も用意。
2024年4月参拝時に掲示されていた藤桜の御朱印帳。(桜の時期限定)
春日信仰の神使である「鹿」、安産祈願の戌の日から「戌」、社紋である「八ツ藤」の3種類。
いずれも道中安全祈祷御守と御朱印付きで初穂料2,000円。

御朱印帳について詳細は公式サイトにて。
三田春日神社  |  三田春日神社 - 東京都港区 JR田町駅より徒歩10分 慶応大学隣
東京都港区 三田春日神社 JR田町駅より徒歩10分 慶應義塾大学東門隣 こどもたちの笑顔があふれる氏神さまです。ご祈祷のご予約は電話( 03-3451-5420)でお申し込みいただくか、社務所窓口までお越しください。 社務所受付時間 9:0...

他にも鹿まもりなど色々な授与品が用意されているのでお受けするのもよいだろう。
お手製の花守。
奈良の「春日大社」で授与しているものと同じ交通安全神鹿ステッカー符。

都内でこうして「春日大社」の授与品を頂けるのは有り難い。
春日大社
春日大社は、春日山原始林を背景に奈良公園内にある神社。世界遺産「古都奈良の文化財」であり、 奈良 時代に平城京の守護と国民の繁栄を祈願する為に創建され藤原氏の氏神を祀る。神が鹿に乗って来たと言い伝わる

所感

三田の鎮守として崇敬を集める当社。
古くは目黒三田に創建し、後に当社へ遷されたものの、現在も目黒三田には兼務社が残る。
三田村の鎮守として崇敬を集め、江戸時代には大名屋敷が多い三田で多くの信仰を集めた。
明治になり慶應義塾が隣に移転してきてからは、共に三田の歴史を歩んだと云えるだろう。
現在も慶應義塾大学三田キャンパスの隣という事で、慶大生や会社勤めの方が立ち寄り参拝する事も多く、日頃から参拝者が途切れない境内となっていて、境内の休憩所で休む人も多い。
筆者も母校の近くであったため学生時代からよく参拝に立ち寄った思い出が強い。
さらに三田商店街や慶應仲町通り商店街といった近隣商店街との繋がりも深く、例大祭は活気よく賑わい、東京タワーと神輿の対比を見る事ができて、中々によいロケーションとなる。
今もなお崇敬されているのが伝わる「三田の春日さま」である。

御朱印画像一覧・御朱印情報

御朱印

初穂料:志納
社務所にて。

※通常時は藤の御朱印だが桜の開花時期は桜の御朱印となる。

御朱印帳

オリジナル御朱印帳
初穂料:2,000円(御朱印代込)
社務所にて。

オリジナルの御朱印帳用意。
鹿・戌・八ツ藤の3種類。
道中安全祈祷御守と御朱印付き。
桜の期間に藤桜の御朱印帳頂くとオリジナル仕様の御朱印付き。

※筆者はお受けしていないため情報のみ掲載。

授与品・頒布品

交通安全神鹿ステッカー符
初穂料:300円
社務所にて。

※奈良の春日信仰の総本社「春日大社」で授与しているステッカーを当社で頂く事ができる。

参拝情報

参拝日:2024/04/10(御朱印拝受)
参拝日:2023/03/31(御朱印拝受)
参拝日:2022/01/29(御朱印拝受)
参拝日:2021/03/23(御朱印拝受/ブログ内画像撮影)
参拝日:2019/07/08(御朱印拝受)
参拝日:2015/04/30(御朱印拝受)

Google Maps

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