新倉富士浅間神社(三国第一山富士浅間神社) / 山梨県富士吉田市

富士吉田市

神社情報

新倉富士浅間神社(あらくらふじせんげんじんじゃ)
三国第一山富士浅間神社(さんごくだいいちさんふじせんげんじんじゃ)

御祭神:木花咲耶姫命・大山祗命・瓊瓊杵尊
社格等:村社
例大祭:4月19日
所在地:山梨県富士吉田市新倉3353
最寄駅:下吉田駅
公式サイト:https://www.arakurafujisengen.com/

御由緒

 人皇第四二代文武天皇の慶雲三年(705)九月九日、甲斐国八代郡荒倉郷へ富士北口郷の氏神として祀る。第五十一代平城天皇大同二年(807)富士山の大噴火があり八月二二日当社に朝廷からの勅使が参向せられ国土安泰富士山鎮火祭を執行し、その時平城天皇より三国第一山の称号並天皇の御親筆であり現在大鳥居にある勅額、金幣、破魔宝面(勅使面)を奉納せらる。下吉田駅北方新倉山中腹に鎮座し、神域は新倉富士浅間公園として内外より親しまれ、赤い大鳥居と戦没者慰霊の五重塔「忠霊塔」は当地のシンボルとして眺望は随一である。山梨県神社庁より)

参拝情報

参拝日:2016/04/20

御朱印

初穂料:300円
社務所にて。

新倉富士浅間神社

御朱印帳

初穂料:2,000円
社務所にて。

浅間神社めぐりの御朱印帳が置かれていた。
全国の浅間神社専用の御朱印帳のようで初見。

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※筆者はお受けしていないので情報のみ掲載。

歴史考察

富士山の眺め日本一

山梨県富士吉田市新倉にある神社。
旧社格は村社で、新倉地区の鎮守。
かつては「三国第一山」の称号を名乗る事が多かったが、現在は「新倉富士浅間神社」と呼ばれる事が多い。
境内の新倉山浅間公園は、富士山の眺望が日本一とも言われる絶景を楽しむ事ができる。
ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン改訂第4版の表紙にもなった景色を見るために、特に海外の観光客からの人気が高い。

三国第一山と呼ばれた富士山

社伝によると、創建は慶雲三年(705)に、甲斐国八代郡荒倉郷の氏神をお祀りしたとある。元は土着の神をお祀りしていたものと思われる。

さらに大同二年(807)、富士山の大噴火があり、平城天皇の命により当社に勅使が参向せられ、国土安泰富士山鎮火祭を執り行った。
この時、平城天皇より三国第一山の称号と天皇の御親筆である勅額・破魔宝面・金幣が奉納されたと、している。

三国第一山とは富士山の事を現しており、そこで出てくる「三国」というのは、日本・朝鮮・中国の事であろう。
三国においても富士山は第一の山であるといった表現になる。

当社はこうした御由緒によって「三國第一山」の扁額を掲げている事が多い。
image大鳥居や社号碑、他にも色々と「三國第一山」の文字を見る事ができる。
それだけ富士山の神をお祀りする浅間信仰という事以上に、富士山の眺望の良さ、そして崇敬が篤かったのだろう。

史実としての富士山大噴火

上述の御由緒は社伝として伝わる部分なので史実としては定かではない。
そもそも富士山で大同二年(807)に大噴火が起きた記録が残っておらず、大噴火が起きたのはそれよりも50年以上後の貞観六年(864)の貞観大噴火である。
約2年近く続いた大噴火で、現在の青木ヶ原樹海を形成するに至った大噴火。

この時、朝廷から富士山の火の神をお祀りする「富士山本宮浅間大社」の祭祀怠慢が大噴火の原因と見られたため、その影響で富士山の北側である甲斐国にも浅間神をお祀りする事となったといった事柄が、『日本三代実録』に記されている。
そのため駿河国(静岡県)だけでなく甲斐国(山梨県)にも多くの浅間信仰の神社が増える起因となった。

これらは甲斐国一之宮である「甲斐国一宮浅間神社」や式内社論社の「河口浅間神社」の御由緒にも登場しており、正史にも載っているという事で、史実としてはこうなると見るのが自然だろう。

そのため、当社の御由緒にある大同二年(807)の大噴火は不明となってしまうのだが、それ以前の創建年というのが事実という観点で見ると、察するに古くは八代郡荒倉郷(現在の新倉)の土着の神としてお祀りされていたものだと思われる。
そして上述のように貞観大噴火で甲斐国にも浅間信仰が浸透するようになり、その際に当社にも浅間神がお祀りされ、「三国第一山」と称されるようになったのではないだろうか。

いずれにせよ、古くから地域の鎮守様、そして富士山への崇敬の篤い地域だった事が窺える。

武田信玄の父・信虎

戦国時代には武田信虎が、北条氏との戦いの際に、新倉山に陣を取ったとある。
その際に当社に戦勝祈願し、勝利したため、刀を奉納したと伝えられている。

武田信虎は歴史上の人物として有名な武田信玄の父。
信虎は家臣とともに身延山「久遠寺」へ参詣し、その後に富士山への登山を行っていたり、富士山頂を一周する「御鉢廻り」を行っている人物でもあり、宗教的示威行為の側面もあるが浅間信仰への崇敬が篤かったようだ。

以後、八代郡荒倉郷(現在の新倉)の鎮守として崇敬を集める。
当社の近くには同じ新倉に「小室浅間神社」が鎮座しており、規模としてはそちらのほうがやや大きい。
そのため、当社は村の小さな鎮守として、地域に根付いた信仰があったと推測できる。

戦後の境内整備

明治になり神仏分離。
当社は村社に列している。

戦後になり昭和三十四年(1959)に境内が新倉山浅間公園として整備される。
昭和三十七年(1962)には、戦没者慰霊塔として忠霊塔が建設。
これが現在の景観と人気に繋がっていく。
これに際して境内も色々と整備されたようで、現在の眺望になったのは最近の事、と見るのが良いだろう。

これまでは知名度もなく地域の鎮守としてお祀りされていた当社だが、こうした努力によって注目を浴びるようになったのは良い事だと思う。

美しく整備された境内・富士山の眺望

地域の鎮守として規模が大きくはない当社だが、近年の整備によって素晴らしい景観の境内となった。
最近は観光客も増えてきたようで、駐車場の整理や、境内に移動式販売店なども出ている。

参道は綺麗に整備されているのが見事。
image駐車場から入る方が多いため、横から境内に上がっていってしまうのだが、ぜひこの表参道の美しさも堪能したい。

参道の石段を上ると上述した「三国第一山」の扁額のある大鳥居。
この大鳥居なのだが、実は富士山の眺望スポットである。
image忠霊塔のほうへついつい足を運んでしまう方が多いのだが、大鳥居を潜った先から富士山を見ると見事な姿を見せてくれる。

その先は手水舎、そして神楽殿と隣接するように社殿が建つ。
image社殿の造りは本殿と一体になっており拝殿・幣殿・本殿とは別れていない。
左手奥には境内社の「荒濱神社」が鎮座、手前付近には「塩釜神社」が鎮座している。

社殿前の境内敷地には移動販売店が来ており、ベンチなども置かれている。
image海外観光客から人気のため、こうした需要も高いのだと思われる。
やや高台にあるため、こちらからも富士山の景色が見事となっている。

御朱印は社殿左手の社務所にて。
書き置きも用意してあるが、人がいる場合は帳面に書いて頂ける。
「富士山眺望日本一」の文字が眩しい。
浅間神社めぐりの御朱印帳も用意されていた。

ミシュランガイド表紙にもなった絶景

境内から新倉山浅間公園への長い石段を上る。
imageかなり長い石段なので上るのは休み休みで。
途中には境内社の「愛宕神社」も鎮座している。
長い石段の途中、もしくは上まで上り振り返ってみると、そこには富士山の絶景が見える。
imageこの新倉山浅間公園は昭和三十四年(1959)に整備された当社の境内の公園。
当社そして地域の町おこしとしての面も強いように思う。

石段の先には戦没者慰霊塔として忠霊塔が建っている。
image昭和三十七年(1962)に建設されたもので、新倉山浅間公園のシンボルとなっている。

この右手より坂があり忠霊塔の裏手の高台に上れるようになっている。
imageあまりにここからの景色が人気のため、平成二十七年(2015)の冬に整備された一画。
ベンチなどがあり、そこから富士山を眺望できるようになっている。

ここから見るのがいわゆる「富士山眺望日本一」とされる景色。
image忠霊塔の五重塔と富士山の組み合わせが、日本的という事で、特に海外観光客の人気が高い。

ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン改訂第4版の表紙になった景色。
さらにルフトハンザ航空の機内誌やタイの義務教育課程の教科書に掲載されたことがある。

忠霊塔は戦後に出来た鉄筋コンクリート造の建物であるし、最近になって整備された一画。
そのため人工的に造られた景色という事ができるかもしれない。
しかし見事な富士山を眺めていると、そんな事は野暮でどうでもいいように思う。

とにかくハッとさせてくれるような絶景。
実際に生で見ると「来てよかった」と思える景色。
長い長い石段の上にあり、苦労して上りがいのある、そんな素敵な景色となっている。

多くの海外観光客が来ており、誰もが記念撮影をしていく。
そうした面からしてもこの公園整備は大成功であろう。

所感

新倉の鎮守として地域に崇敬された神社。
神社の規模としては大きなものではなく、正に村の鎮守といった雰囲気ではある。
しかし、戦後の境内整備、公園整備によってまばゆい景観の地となり、現在は観光客が多く訪れる富士山眺望の場として浸透しつつある。
海外からの人気でまだ日本国内ではそこまで認知されてはいないようだが、いずれ日本でも人気スポットになる(なりつつある)のだろう。
こうして境内整備を行い多くの人を集める事は、神職や氏子など地域の方々の努力の賜物であり、それがこうして成功している事が喜ばしい。
富士山の眺望ポイントとして人気の場所ではあるが、あくまで神社の境内。
参拝する事も忘れずに、富士山の絶景を楽しみたい。

神社画像

[ 社号碑・参道石段 ]
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[ 参道石段 ]
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[ 大鳥居 ]
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[ 大鳥居からの富士山 ]
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[ 社務所・社殿・神楽殿 ]
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[ 手水舎 ]
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[ 社殿 ]
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[ 神楽殿 ]
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[ 荒濱神社 ]
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[ 子育て神木 ]
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[ 狛犬 ]
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[ 塩釜神社 ]
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[ 忠霊塔への坂道 ]
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[ 愛宕神社 ]
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[ 忠霊塔への石段 ]
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[ 石段からの富士山 ]
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[ 忠霊塔 ]
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[ 見晴台 ]
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[ 見晴台からの眺め ]
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Google Maps

コメント

  1. 堤怜子 より:

    是非一回一度参拝して見たいです。

    • 神社メモ 神社メモ より:

      参拝したのは3年半前になりますが、とても綺麗でよい景色でした。

      当時は知る人ぞ知るといった形で、
      日本人の参拝者はあまりおらず、殆どが外国人観光客だったのですが、
      現在は国内のメディアなどにもよく取り上げられるようになったので、
      日本人の方も多いそうですね。

      ぜひ一度参拝してみて下さい。

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